異形の詩歴書 14歳春/佐々宝砂
 
だけで書かれたその詩には、「しゅろう」と「ついく」の他に難しい言葉などない。あかるくくれなずんだ風景の中にさくらがちりかかる、それはやさしいわかりやすい情景だったはずなのに、当時の私には、その詩が何を伝えたいのか、どうしても、わからなかった。でも、今ならわかる。結婚したからわかるのではない。年をとったからわかるのでもない。ある程度年を重ねなければわからぬ詩ではあるけれど、それだけではないと思う。私はごく最近、唐突に、この詩がわかるとおもった。その理由は、自分でもまだよくわからない。ゆっくりと考えてゆきたい。

 新川和江の詩は、おそらく、私が老人になっても、私が14歳だったときと同じように、あるいはそれ以上に、私を惹きつけるだろうと思う。私は人生の節目節目に新川和江の詩を読むだろう。そのような詩人に出会えた幸運に、私は感謝する。

2001.3.27.(初出 Poenique/シナプス)
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