異形の詩歴書 14歳春/佐々宝砂
して知っている。私は本を選ぶことができなかった。好きな分野の本だけを読む、という贅沢ができなかった。飢えていたから、手当たりしだいに何でも読んだ。はらぺこあおむしみたいに学校図書室の本を端から片づけてゆき、それだけじゃ足りずに特殊学級の学級文庫まで読んだ(そこにしか置いてない本、というのがあったからだ)。
国語の教科書と便覧は、そんな私にとってひとつの指標になった。このころ私は、国語便覧で若山牧水と与謝野晶子を知る。百人一首しか知らなかった私に、近代短歌はおそろしく熱いもの、火傷しそうな熱情と血潮にあふれたものだと感じられた。私は牧水と晶子の短歌を十あまりノートに書き写した。そのほとんど
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