異形の詩歴書 14歳春/佐々宝砂
 
 当時私が住んでいた町には、本も売ってる店が2軒あった。言っておくが書店ではない。「本も売ってる」店である。どちらの店に行くにも、自転車できっちり20分かかった。ひとつは、スーパーに隣接した、雑誌と文庫本とマンガだけを売っているコーナーだったが、ここはあまり好きでなかった。しかし、私はその店で山田風太郎や遠藤周作や佐藤愛子や萩尾望都なんかを買った。もうひとつは、バスの待合室の向かいにある雑貨屋で、チョコレートやホッカイロや煙草と並んで、どうしたわけかハードカバーの児童書まで売っていた。私はこの店が割と好きだった。意外なものに出会えたからだ。私はその雑貨屋で鈴木いづみの『女と女の世の中』を買い、ジュ
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