異形の詩歴書 14歳春/佐々宝砂
 
ジュリー・アンドリュースの『偉大なワンドゥードル最後のいっぴき』を買った。

 その町には、図書館がなかった。ちなみに、今もない(注:これを書いた時点ではなかったのだが、2006年現在は市町村合併そのほかの理由によりその町にも図書館がある)。数年前まで無医村に指定されていて、自治医大卒の医師が派遣されてきていたという土地である。そんな、図書館も書店もない町で、欲しい本を注文するという知恵も持たず、母の支配下で偏った知識と読書の習慣とを身につけて、私は相変わらず貪欲に本を読み続けていた。今思えば、私が田舎に育ったことは僥倖だったのかもしれない。私は、「活字に飢える」という状態を切実な経験として
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