異形の詩歴書 14歳秋/佐々宝砂
もしもこの世に「人力飛行機のための演説草案」がなかったとしたら、私は生きてゆけないかも知れぬ。あるいは、その最後の4行で人力飛行機が飛翔しなかったとしたら、私は詩を書くなどというヤクザなことはせずに、平凡なイナカ者として暮らして平穏に天寿をまっとうしたかも知れぬ。しかし、私は「人力飛行機のための演説草案」を読んでしまい、その最後の4行で人力飛行機が飛び立ってゆくのを目撃した。ある種の詩は、ひとを飛翔させる。確かに飛翔させる。それだけが詩の目的ではないにしろ、私が最も愛するたぐいの詩は、そのような詩なのだと思う。それから「事物のフォークロア」。私はあまりにもあまりにもこの詩を愛しているので、この詩
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