傷の邪教/岡部淳太郎
ながら
記憶にない思い出からの侵略を受ける
そのものたちは集団で歩く
ひとり
ふたり
地上の意識を眠らせたままで
隠された太古に目醒めたものたちが
闇の巡礼の最後尾に加わってゆく
満月の下
そのものたちは彼等を従えて
人類の街路をすべるように歩く
夜はあまりにも残酷で
夜はあまりにもしらけきっている
傷の動乱の後の静けさ
その中で夜は不気味に笑う
そのものたちは夜に向かってそれぞれの傷口を
嘲笑のように開く
筋肉の大通りを練り歩き
人々の今日を憎悪で満たし
隕石の窓の前に立ち止まり
人々の明日を歓喜で満たす
なおもこの世のものでない声を求めて
洞窟の前で
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