傷の邪教/岡部淳太郎
 
前で礼拝し
呪いのような
喃語のような
地上の誰も耳にしたことのない言葉をつぶやく
君は眠れない
君は寝床の中で次の朝を思いながらも
ひとりこごえて夢のきれはしを縫い合わせる
そのものたちは集団で歩く
その後尾に新しい信者たちを従えて
満月の下
すべるもののために時を整える
人類の街路を黒い信念で歩きながら
やがてそのものたちは君の扉の前に立ち止まる
時がやってきたのだ
君は起き上がり
扉を開ける



連作「夜、幽霊がすべっていった……」

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