傷の邪教/岡部淳太郎
越えてゆく
満月の下
そのものたちは集団で歩く
関節くさい入江を跨いで
人々の眠りをおびやかし
岩石のにおう橋を渡って
人々の夢にゆさぶりをかける
君は眠れない
君は寝床の中で汗を流してやせていきながら
ひとりふるえて時を待つ
そのものたちはすべるように
人類の街路を流れてゆく
求めるものはただ
向こうからやってくる堕落したものの声だ
夜はあまりにも優しく
夜はあまりにも騒がしい
聴け
息を殺して
祈りのかたちの掌で虫を殺して
闇の中に裸の指をさし入れれば
星の燃える音が
亡者たちのすすり泣く声が響いてくる
君は眠れない
君は寝床の中で寝返りをうちなが
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