夜の鍵/岡部淳太郎
 
は生きる
死んだ後
ふたたび硬い
暗い破片となって
路上に飛び散って人々の
胸に突きささるため
明らかないま
夜の韻律を路上にたれ流し人々を
酔わせるため
いまは夜
太陽の法は通用しない
もう 幸福な歌に意味などはない
ただ夜のみが
すべての歌の
すべての夢の
通奏底音として鳴り響く
地下水のような
かつての生のような
かすかに聴こえる
優しくも苦い歌
人はその中で眠る
今夜もまた
同じ悪夢を見る

人は死ぬ
その中に口外出来ぬ秘密を宿らせたまま
ひとりの死は
すべての夜よりも重い
だから夜は泣く
その涙が露となって
眠る人の屋根に貼りつ
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