夜の鍵/岡部淳太郎
りつく
そして夜が歌う
七つの物語
悪夢の中で安らかに眠る人々に拾わせるため
夜はそれらの物語を人々の枕元に置く
やがて人々は眠りの中で目醒める
ひとり またひとりと
胸に暗い破片を宿らせたまま
雪崩のように隕石の道に押し寄せてゆく
ゆっくりと
心臓の上に浮かび上がった聖痕を 手で押さえ
夜からの贈り物を待つ
夜は人々の手に握らせる
恐怖を越えて
扉を開け放つための鍵
夜は微笑む
そこでやっと
今日も首尾よく死ぬことが出来る
連作「夜、幽霊がすべっていった……」
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