夜の鍵/岡部淳太郎
 
夜は死ぬ
その中に秘密を宿らせたまま
ふたたび夜が生まれ変るまでの
小さなひととき
人は夜がその死に際して降らせた
ばらばらの
暗い破片を
胸に突きさしたまま歩く
何かおかしい
どうも気分がすぐれない そう思いながらも
いつもと同じ
午睡の路上を歩く

夜は在る
たとえ今日が
幸福な新しい岩石の創出だとしても
たとえ行列が
途絶えることのない納得の連続だとしても
夜は明らかに
冷ややかに
古代の王として立ち止まる
その腕の中で眠る 夜の
七つの物語
彼等はしとやかに横たわる
人のすべての遅刻を受け止めて
人の不実の歴史を背負ったままで

夜は生
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