存在/岡部淳太郎
 
朝食の
トーストとコーヒーの間に
そのものは存在する
点々と どこまでもつづく血痕を
追え
賢者の道よりもまず先に
なすべきことがある
埋められた蹠(あなうら)
ますます増長する掌
その中で栄枯盛衰の 螺旋を
わしづかみにして
夜にこそ光輝く
だがどんな光と闇の位相にもつきまとう恐怖を
思え
古い
契約を忘れてもらっては困るなにものかが
いるのだ
そのものは歌っている
存在は
常に確かめることが出来る
そのものは飛んでいる
存在は
存在としての威厳を保つ

夜食の
茶漬の思考の眼前へ
着地せよ
あるいはうらぶれた野に
変りゆく雲の只中に

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