忘却/岡部淳太郎
混沌の中に
夜はある
夜の中には数多の息が
凍りついたまま存在していて
人々はその下で
ぶざまな眠りを眠っている
君は
やがて忘れ去られる
それが君の運命である
目的を持たない淋しい人々の行列のように淋しい
街灯の行列の
途絶えたところ
そこで君は
夜の中に凍る息となる
それは遠い未来のことではない
君だけではない
誰もがみな
遠からず同じ途をたどる
誰もが
やがて忘れ去られる
それが人の運命である
だからこそ人は
やがて自らもそうなるであろう
夜の息を
そっと取り出して
掌の中で暖めて解凍し
息がその内に秘めていた遠い
物語を
歌うように愛
[次のページ]
前 グループ"夜、幽霊がすべっていった……"
編 削 Point(6)