忘却/岡部淳太郎
 
に愛撫する義務がある
そうすることで夜の混沌は
いくらかでも整理されうるのだ
君よ
君がまだ生きていて
青い血管の脈動とともにあるいまのうちに
ぶざまな眠りから起き上がり
誰からも忘れ去られてしまった夜の息の
いちばん近いひとつを選んで
暖めるのだ
君は
やがて忘れ去られる
それが君の運命であるのなら
忘却ということの
その恐ろしさを
君が知っているのなら



連作「夜、幽霊がすべっていった……」

  グループ"夜、幽霊がすべっていった……"
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