それは怖い夢物語『不思議な糸』/和泉 誠
 
寝苦しくて目を覚ますと真っ暗だった
辺りはまだ酒臭く、みんなのだらしない寝息が聞こえる

何か違和感を感じて尻尾を触ってみると
そこに糸が絡まっていた
ちがう
尻尾の付け根を糸が通っているのだ

糸のあとをたどってみる
隣に寝ていた八郎の尻尾の付け根にも
同じように糸が通っていた
糸はまだ続く
その隣に寝ている平八にも
その隣に寝ている田吾作にも

糸はちょうど私達全員の尻尾を通って
一周して一くくりの輪を作ろうとしていたようだった
四郎と正三の間、数センチという所で
糸はお互いを求め合いようにしてぷっつりと切れていた

糸は朝日が差し込むにつれてゆっくりと
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