とどける/岡部淳太郎
 
そうじみた、あさのぐ
んぶのなかに、君はいるのだろうか。君のいばしょを
どんなひともしることはないのだから、君はあんしん
して、おもうぞんぶんたっぷりと、あおざめることが
できるのだ。せかいのどこかでころしたくなかったい
きをつぎつぎにころしながら、すべてをながめている
君よ、きこえるか。うたが、きこえるか。君のための
うた。あるいは、君のためにならないうた。君はもう、
どんないきもころしたくない。それらのいきのしがい
のなかで、うもれていたくない。君よ、きこえるか。
とどける。こうして、とどけている。うたを、君のさ
ばかれることのないささやかなつみとおなじようにひ
そやかな、ひとつのうたを。とどける。きこえるか。



(二〇〇六年十二月)
   グループ"散文詩"
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