妹のはじまり/岡部淳太郎
この時代、未熟な力が求められている。いまだ生まれえない、いつ
までも成長することのない力。たとえば秋のにおいのする草原に行
けば、妹という名の下にそれはごろごろと転がっている。妹のやわ
らかさを、疲労した男たちは求めているのだ。だが、生まれた順番
を変えることはけっして出来ないのだから、妹はいつまで経っても
妹でしかありえず、それは妹が成長して六人の孫を持つ老婆になっ
ても変ることはない。親からお兄ちゃんなんだからしっかりしなさ
いという、理不尽な叱られ方をするのが兄の宿命であるように、妹
は遅く生まれた者であるがゆえの特権を持つに過ぎない。妹もやが
て男をつくり、家を出て、いや
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