祝祭/岡部淳太郎
 

できない、そのおもてにとどまる、尖塔のうえに飛散す
る大気、「私」の、または、誰のものでもいい、その皮
膚の手ざわりのような、この道、知られることのない、
知ることのかなわぬ、ただひとつの、むすうの、果汁の
味、引っくり返っては、引っぱり出されては、元にもど
る、そんなぞんざいな、あるかどうかもわからないもの
への欲動が、渇きのように、喉にこみあげてくるだけで、

あるいは、その風にふかれながら、枯れていくむすうの
街路樹をながめる、うらを、おもてを、ばらばらに見せ
て、力なくよこたわる、むすうの葉、それは「私」のか
たち、または誰かのかたち、で、あるかもしれず、かた

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