祝祭/岡部淳太郎
 
あるいは、その時の感傷、ではなくただの、感情、心の
剥がれ落ちた、かたち、そのおもてを上塗りするように、
すべらないように、注意して、歩いていく、と、見えて
くるものは、「私」のかたちとしての、風景、たとえば
丘があって、そのてっぺんにただいっぽんの、木がたっ
ていて、その葉のうらにむすうの、虫たちが、そこを仮
の宿としながら、住んでいる、そんな古い絵画で、あっ
たのだが、あるものは、いまここになく、ない、という
ことで、そのそんざいが、ますますたしかになるだけで、

あるいは、その方角に向きながら、蜜柑の皮を剥く、終
らない作業、いつまでも、甘い場所にたどりつくことが

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   グループ"散文詩"
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