難破した船の来歴/岡部淳太郎
に瞑目した。
人生とは波のようであり、また、船のようで
もあった。漂着した船はみなの見守る前で静
かに軋み、水平線の緩やかな曲線のように撓
むと、ほっと息をつくかのように黙りこんだ。
そして、音もなく、ゆっくりと崩れていった。
海の中心から吹いてくる潮風が、船の残骸を
愛撫するように優しく通り過ぎた。
老人たち
は跪いて祈った。われらの混沌が優しい微笑
とともに見送られるようにと。若者たちは呆
然とこの先のずっと先の明日を思って、黙り
こんだ。船の残骸と、海の波と、それを取り
囲んで立つ人びと。ふいに鴎が飛び立ち、日
が翳った。世界は
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