難破した船の来歴/岡部淳太郎
 
骨、交差したあばら骨、そしてその者が
生きていた時を偲ばせる、縞模様の衣服のき
れはしが、腰骨のあたりにまとわりついてい
た。

  ざら、ざら、
        
        この世のものではない音が、
船の底から聞こえてきて、若者は縮み上がっ
た。これが老人たちが聞いた音であったか。
若者はすべての勇気と純粋さを捨て、一目散
に船の外へ走り出た。恐怖が、彼の頼りない
心をつかんで離さなかった。猫は若者の退散
を見届け、ひと声低く唸るように鳴くと、も
といた船室の中へ戻っていった。

               それから人
びとは浜辺に立ちつくして静かに瞑
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  グループ"散文詩"
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