風のための散文詩/岡部淳太郎
 
ふけよふけ風よふけふらふらとふらつきなが
ら歩く背中を笑うように風よふけふきげんな
女のみにすかあとをひるがえしふせいみゃく
にくるしむ老人ののこりすくない頭髪をおび
やかしふるいぺえじをめくりふるい記憶をふ
るいわけて風よふけふかい空のそこから流れ
くだるようにふく風にふりこは揺れふりかえ
る時の狭間からふきおろすようにふく風にふ
くのすそはまくれあがり風にさわられてかす
かに欲情はふるえ風にさらわれてかすかな人
はふるふるふるえ綿毛をはこんで枝からはな
れた木の葉をはこんではなればなれの思い出
をはこんで風はふき窓をふきほこりを息でふ
きとばしひらりと舞い上がる鳥よひ
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