晩夏の蛹/岡部淳太郎
 
さなぎの、笹食べているのを見て
いると暗澹とする。ささ、さあ、
こちらにおいで、さなぎ。どうせ
おまえは動けないのだから、せめ
て、こんな年寄りのところまで、
這いずり回って、混沌のようにや
ってきなさい。さなぎの さ の
字は最悪の未来の訪れを暗示し、
さなぎの な の字は何もない未
来を暗示し、さなぎの ぎ の字
はぎりぎりの未来を明示し、その
ようにして、さなぎはすでに絶望
の裡にある。さなだむしよりも愚
かなさなぎよ、私の尻の中に潜む
こともせずに、もう夏も終りだと
いうのに、幼くして薄汚れた衣の
中でひきこもり、何を思っている
のか。どうせ成長したところ
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