白い陽/岡部淳太郎
 
止まって、白い横断歩道の眩しさに、眼を細めています。白のまま生きるのは、きっと不可能なことなのでしょう。

日々はいまも、何色でもない時を刻んでいます。私の血の赤さも、私の精液の白さも、そのままの色ではなくて、何だか薄汚れています。錆、または白い斑点が浮き出た生活、その中で、同じように白から離れた人びとと会食します。日々の務め、その中で、白い波に洗われて、砂浜は削り取られていきます。死んでしまった妹は、その死の間際に、白い陽を見たのでしょうか。

またひとつ、罰を受けました。私が白であるための、私が白でないための、当然の報いなのでしょう。頭上に浮かぶ白い雲のように高く昇れないのなら、白いままではいられない時の、その代償として、ただ生きるしかないのでしょう。妹はいま、白く輝く海を望む、白い墓地の中で眠っています。私の眠りはいまも昏いままなのですが、白い陽を浴びて、起き上がる日が、いつか来るのでしょうか。



(二〇〇五年八月)
   グループ"散文詩"
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