「まあだだよ」/大町綾音
 
のだ。それは衰退ではなくって、逆に円熟だった。
 それまで、暗い、例えばベルトラン・タヴェルニエの「パッション・ベアトリス」のような作品ばかりをわたしは観ていた。その日は雨で、傘を差していても横殴りの雨に打たれていたと思う……その映画館は閉館してしまったけれど、何という館名だったのかも覚えてはいない。
「パッション・ベアトリス」では、娘が父親を殺す。娘の兄は戦争中に上官である貴族に犯され、ベアトリスが一人暮らす城館では、性病を患った女が一人熱病に悶えていた。そんなところに、父と兄とが帰ってくる。
 それから何があったのか……。心理的な事件だ。兄は、女装をさせられた上で貴族たちの狩りの対象とな
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