「まあだだよ」/大町綾音
となり、荒野を逃げ回る。ベアトリスは、父からの凌辱を受ける。そこにはストーリーだけがあったのだが、このストーリーは娘が父親を鉄杭で刺し殺す、という事件によって幕を下ろす。救われなかった。何もかもが救われなかった。
「まあだだよ」において、失踪するのは父でもない、兄でもない。ノラ──という一匹の猫だ。
失踪? ……そう、たとえば戦争という一個の行為は、日常という一個の慣習からの失踪であり、逃亡である。ノラは、ただただ百?の前から姿を消した。そして、百?は自らの前から失踪した一人の女を探し求めるかのようにノラを探し求め……
弟子たちが、先生の代わりに東京の街を猫を探して歩くのだった。
「ノ
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