あの日……/大町綾音
「あの日」──と、言うほどの日でもなく、当初は「ある日」で始める予定だったのだけれど、その日に何かの予感があったのか、なんとなく「あの日」で始めてしまった。
予感──? それも大したものではなく、簡単に言えば「時間が止まってしまう」といあもの。文字通りにそう、というのではなくて、あくまでも私にとっての時間が喪失された、という。
あの日は小雪がちらついていて、私はスズキアルトのハイブリッドXを買って間もなくで、不慣れな運転を慣らすために街へと出かけていた。(この街の中心部まで自動車で出かけていくのは、ほんとうにもう二十五年ぶりくらいだったろうか?)
うまく駐車場に入れず、街区を二度ほどぐ
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