「まあだだよ」/大町綾音
あの日、わたしは友人といっしょに一本の映画を観た。黒澤明の「まあだだよ」。
友人と待ち合わせをしたのは、午後のことだったろうか。たしか、銀座にあるマクドナルドだったか、日比谷のウェンディーズの前で待ち合わせをしていた。……夕方では、なかったと思う。ただ、すこしの薄曇り。それだけを覚えている。
その少し前、その友人と会って話をして、わたしは「まあだだよ」についての所見を述べ、数日後、彼からの「まあだだよ、観に行こうよ」という手紙を受け取ったのだった。まだ、携帯電話などは普及してもいない時代で、わたしの部屋には固定電話もなく、わたしから勝手に友人たちに電話ボックスから電話をするか、あるいは友
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