前田見知子さんという画家/大町綾音
前田見知子さんという画家と知り合いだった。「──だった」と書くのは、もう二十年以上も彼女とは交流がないからなのだが、最後に会ったのももう二十五年以上前で、たしかわたしが二十四歳のときだったと思う。
そのとき、実家のある仙台から「友人に会いに行く」と言って、二泊三日の予定で京都へ出かけて行った。
それで、何をしたのか? 彼女の個展を訪れて、モノタイプを1枚買った。それ以外は、観光すらしていない。……モノタイプとは、一枚ものの版画のことである。
そのときの会話──
「これ、どうやって描いているんですか?」
「教えない」
「えーっ、ずるいですよ。教えてくださいよ」
「これはねえ、ガ
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