その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
けになるなんて、皮肉なことだ。あなたの骨を骨壷に収める時、こんなにも脆く人のかたちは壊れてしまうんだ思った。いまになってゆっくりと思い返してみると、あの時もいまも、僕はあなたの死に一種の観念をまとわりつかせていたような気がする。火葬というのは、遺された人を観念的にするみたいだ。骨だけになってしまうのだから、その周りを観念で肉付けしなくてはならないのかもしれない。僕にはよくわからないけど、そういうことってあるんだろうか。
その後、あなたの骨壷を持って、つまりあなたそのものを持って、葬儀の列の先頭に立って歩いていた時、空は雲ひとつなく晴れ渡っていた。あなたを失った僕たちの悲しみとは無関係に、空はだ
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