季節/岡部淳太郎
季節の変り目には
雨がよく降る
いまがまさにそうで
冬から春へと
季節がわたろうとしている
そういえばあいつも
こんな時に死んだのだったな
そう思ってまだかたい
桜のつぼみを見上げる
今日も雨
街路樹の植込みの葉の
緑がぬれてなまめかしい
あいつが遺していったものが
まだどれだけあったか
まだどれだけ
自分の中にしまってあったか
そんなことを考えながら
ぬれてつやつや光る
舗道に目を落とす
季節の変り目には
雨がよく降る
いまがまさに
そうなのだろう
地球はこれまで
いったいどれだけの雨に
たえてきたのだろうか
(二〇〇九年三月)
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