その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
 

 あなたを送る儀式。通夜とか葬儀とか呼ばれている一連の儀式のこともよく憶えている。でも、それについて語るのはやめにしておくよ。あなたが向こう側に渡ってしまってからもう何年にもなるから、いまさらそれを語ったところでしかたがない。あれはあなたを送るための儀式だったんだから、それをいまあなたに向かって語っても大して意味がないだろうから。ただ、いくつかのことにはちょっとふれておきたい。それはあなたの体を焼いて骨壷に収めた時と、その骨壷を抱いて葬儀の列の先頭に立って歩いた時のことだ。あなたの体を焼いた時、後には砕けた小さな骨しか残らなかった。もともと背が低くて小さいあなただったのに、さらに小さく、骨だけに
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