その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
 
のものとなって泣いた。僕自身が死んでしまったような、僕の中の大きな一部分が、あなたの死によってむしりとられてしまったような感じだった。僕は僕の中に、あなたの死を抱えていた。いや、いまでも抱えている。あれからもう何年も経ったせいで大分薄められてはいるけど、いまも僕の中にあなたの死は残っているんだ。たぶんこの先ずっと、僕があなたが渡っていった向こう側にたどりつくまで、それは僕の中に留まりつづけるだろう。この僕の中に遺された死はあなたの忘れ物かもしれないけれど、あなたがそれを取りに戻ってくることはもうない。だから、あなたの代わりに僕たちが、それぞれにあなたの死を大切にしまいこんでおくしかないんだ。
 
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