50:50/中原 那由多
手離したはずの選択肢
見渡すことの優越感と
逆戻りする緊張に枝分かれして
毛細血管に絡み付きながら
そっと微笑みに呼び掛けている
遠くなった残り香は
脱け殻を捨てることを拒んだ
金木犀の匂いが何故だかいつも切なくて
私が書いた迷路を白紙に戻してくれる
関わりのない場所からの冤罪を恐れ
素知らぬふりをすることはまるで
普段通らない道で帰る時のよう
投げやりになったことを償おうと
未完結を偽ろうとしてみるも
水に濡れて溶けてしまうなら
何処を歩けばいいのだろう
言葉を犠牲に撃ち落とされた真相
風化を待つことに耐えられず
自ら破壊しようと躍起になった
鏡に映った自分の背後が
割と綺麗なままだったのを確認すると
振り返ることは難しいことではなくなっていた
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