かつて可憐の予定/中原 那由多
あれはまだ私が空元気だった頃
当時はまだ必死で愛の歌を歌おうとしていたせいもあり
それをこっそり聞いた人がいた
別に私も隠したつもりはなかったし
むしろ、聞こえればいいと思っていたくらいだ
今となってはずいぶん軽率だったのかもしれないと考えるが
私の息吹は白く遠くへは行かなかったせいもあり
すっかり冷たく循環した
しかしまあ
撒いた種というものは何かと芽を出すものらしく
蕾と言われるほどにはなったらしい
それをわざわざ回収してまで私に見せる人がいた
邪険に扱うでもなく、ただ唇を噛んだ
その植物の名前さえ忘れてしまっていたのだが
どこか奥底で喜ぶ私が独りいた
実際はもっと可愛い花を咲かせるはずだったが
何しろ愛が足りないものだから
ここで止まってしまったのだ
惜しいことをしたのだろうかと自分自身に問いかけるも
私には再び育てることができないこともまた事実であった
前 次 グループ"悠希子"
編 削 Point(9)