不器用風に吹かれて/中原 那由多
健気に鳴き続ける蟋蟀に嫉妬した夜は
何も思い浮かべることが出来なくて
言い訳の代わりに意地っ張りな顔をしてみる
涙を落とす理由がどこにも見つからない
時々、弱くありたいと考えてしまう
強がることの美学にうんざりして
不本意な行動に走っては
そうじゃないんだと落胆する
それから止めどない妄想に閉じ籠る
それなりの幸せがあり、特別な不自由などはなかった
いつの日だったか
私は本当に好きなものだけを部屋に飾りたいと言った
友人は
「それが一番だと思うよ、俺は妥協しちまったけどな」
と答えた
彼は賛成ではなく謙遜しているんだろうなと考えた時には
ついに信用の仕方を忘れてしまっていた
隠し事はしていない
あたかもそんな風に疑われてしまうのは
生まれつきだから向き合うしかない
夜のしじまに嘆くのは
ただ自分らしいと信じているからなのだろう
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