批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
 
立つものでもある。地味な色であるために目立たず、身を隠すのに好都合のように思われるが、しかし様々な色彩があふれる普通の日常の中にあっては、逆に目立ちすぎるほど目立つものだ。街中や住宅街などで葬儀の行き帰りのような喪服の集団にでくわすことがしばしばあるが、それを見ると誰しも一瞬ぎょっとするものだ。それは彼等を見ている私たちが普通の日常の中にいるため、そこから離れた者たちとして彼等を見てしまうからなのだ。つまり、黒というのは日常的な色ではない。私たちが日常にふさわしい様々な色彩の衣服を身にまとっているのに、彼等の着ている黒衣には日常ではない夜の闇のような宇宙の深淵のようなものが沁みこんでいる。また、喪
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
   Point(7)