批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
 
訪れた他者の死とやがて訪れるかもしれない自らの死。向いている方向はまったく正反対であるものの、詩の中で喪服を着ているという点では同じであるので、これらの詩を総括して「喪服詩」と呼んでみたい。また、これらの詩がこのような同じ言葉で総括されうるのは、他者の死であろうと訪れるかもしれない自らの死であろうと、語り手にとって取替えの利かない大切な事象が扱われているために、時に周囲の事物に対して盲目になってしまいかねない点が非常に似通っているためでもある。
 喪服の特徴をただひとことで表すとすれば、それは黒いということにつきるだろう。喪服は黒い。その夜の闇のような根源的な色は、目立たないと同時に異様に目立つ
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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