批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
 
の直後に書いた詩とその少し後に書いたものとでは、同じテーマを扱っていてもトーンに違いがある。簡単に言ってしまえば落ち着いてきたということだが、死という残酷な現実とその中に放りこまれていた自分を客観的に見られるようになってきたのだ。いつまでも慟哭していては一辺倒の調子になってしまうし、ひとりの詩の書き手として向かうところを思えば損でもある。親しい者の死というのは確かに大切なテーマではあるが、たったひとつのテーマに規定されてしまうのはもったいない。それを捨て去るのではなく、自らの中で温めて、時には取り出して吟味してみることも必要だ。その間に他のテーマで詩を書き、また時々思い出して親しい他者の死について
[次のページ]
   グループ"第3回批評祭参加作品"
   Point(7)