批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
いて書いてみる。それを繰り返すことによって、ひとりの書き手としての「私」が向かうところがおぼろげながらも見えてくるのではないだろうか。
ビートルズの「Baby's In Black」で、語り手が思いを寄せていた女のその後は語られていない。果たして語り手の呼びかけに彼女は振り向くだろうか? それが語り手とともに歩む未来でなくても、彼女がいつまでも悲しみの場所に留まりつづけていることを、死者は決して望んではいないだろう。
(二〇〇八年一月)
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