批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
 
語り手とその感情が目立ちすぎるほど目立つものになってしまっている。
 そこで先ほどの設問に戻ろう。詩における喪服の者たちが向かうところはどこか? 普通の社会では、喪服から日常の衣装に着替えた後はそれにふさわしい生活に戻り、心の中も死者のことをひとまず脇に置いてその者がいない日常生活に慣れていくことが要求される。最初に挙げたビートルズの「Baby's In Black」の語り手のように、いつまでも過去に留まっていないでこれから先のことに目を向けてくれと、社会全体から要求されているのだ。端的に言ってしまえば、「喪服詩」の語り手または作者たちに対しても、同じようなことが言える。訪れうる自らの死を思って
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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