批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
これから先」の中には、自分とともに未来を歩んでほしいという語り手の願望がこめられている。
親しい者が亡くなると、人はいわく言いがたい感情に包まれる。それは悲しみというとおりいっぺんの感情だけではない。それは淋しさであったり、悔しさであったり、茫然自失の無感情のようなものだったりする。それらの複雑に交錯しからみ合った感情をひとことで総括するなら、混乱という言葉がもっともふさわしいかもしれない。
個人的な話になるが、私は四年前に妹を失っている。その直後の自分の感情はまず第一に何が起こったのか理解出来ないという非現実感であって、妹が亡くなった当日は本格的な悲しみの感情はやってこなかったように思う
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