批評祭参加作品■喪服の者たちが向かうところ/岡部淳太郎
ビートルズに「Baby's In Black」という曲がある。世界的大成功を収め、現在に至るまで影響力を失っていない彼等にしてはあまり有名ではない地味な曲で、その後、ただのラヴソングではない歌をいくつも生み出していくことの前触れとなるような、奇妙なラヴソングだ。語り手の男はある女に思いを寄せているが、彼女はいつも喪服のような黒い服を着ている。彼女には男がいたが、その男は去ってしまった。おそらく死んでしまったのだろう。そのために彼女は悲しんで黒衣を着ているのだ。直接うたわれているわけではないが、語り手の男はそんな彼女に対して過去を捨てこれから先のことに目を向けてくれと言っている。もちろんその「これ
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