海の上のベッド(連作集6)/光冨郁也
をつける。イヤホンをつける。
ワイドショーのニュースが放送されている。ずっと眺める。評論家が何かコメントしている途中でCMにはいった。
紺色の海。空は曇っている。ひとりの青年が海岸を歩いている。マーメイドが姿を現わす。〈マーメイド海岸〉の文字と音声。
TVのカードの残り時間が切れた。電源の切れた暗い画面に、自分と背後の窓が映る。たわむ色のない世界。物音しない病室。点滴はもう液がなくなりかけている。そろそろ看護師が来るころだろう。二の腕にさしている点滴のチューブを見つめる。透明な液がわたしに流れている。
何かの気配があったような気がした。イヤホンを外す。TVとは反対の窓のほうを見る。
[次のページ]
前 次 グループ"散文詩「バード連作集1・2・3」"
編 削 Point(8)