霧(ミスト) (連作7)/光冨郁也
持ってくる。薬がなくなったので置いていく。わたしはコップの水を飲む。パジャマに水がこぼれる。薬を口に含み、また水を飲む。
看護師は、点滴を打ちにくる。わたしはいつもトイレが近くなる。点滴スタンドを動かしながら、部屋を出る。廊下を歩く。前にも歩いていたような気もする。誰もいない廊下は、長く感じる。
点滴のチューブを血が逆流している。透明な液に血がまじる。霧のよう。わたしは用を足し、ゆっくりと部屋に戻る。
窓からは海は見えなかった。
けだるい。テーブルの上の薬袋。ここの病室にはTVがない。個室のベッドでCDをヘッドホンで聴いていた。誰かの忘れ物を借りた。その音楽を聴いていると、体が揺ら
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