「名」馬列伝(4) ツキノイチバン/角田寿星
 

騎手のお手馬のなかで、テツノカチドキに匹敵する能力を持った、あるいはそれ以上ではなかったかとファンの間で伝えられるのが、彼であった。

もともと脚元に不安のある馬だったのだろう。デビュー前の調教で大怪我を負う。
左前肢関節の損傷。関節包内の滑液がなくなってしまった、というのだから、尋常ではない。
滑液は、関節を動かす際の潤滑油の役割を果たす。それがないということは、走る度に前肢の骨と骨がぶつかり、激痛を伴う。当然のように球節炎や脱臼、骨折の原因にもなる。デビューできるかさえ危ぶまれるほどの怪我であった。

故障は残念ながら完治することなく、遅れに遅れて3歳7月にデビュー。
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