面接/虹村 凌
早く煙草が吸いたいし、缶珈琲が飲みたい。しかし、彼女のそわそわした態度が、普段見ない私服が、おぼろげにもドラマを連想させる。まさか、とは思うが、期待せずにはいられない。
「はい」
俺は立ち止まり、散々どの返事をしようか迷った挙句、この返事をするのがやっとだった。
「あの…この後、空いてますか?」
残業じゃないらしい。それどころか、何かあるらしい。でも期待は禁物だぜ、シフトの交代とか色々あるじゃないか。期待した時の肩透かしは、カウンターパンチみたいなもんだ。
「空いてますよ。」
俺はそれだけ答えると、気付かれないように深呼吸をした。
「じゃあ…あの、ちょっとお茶でも
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