面接(4)/虹村 凌
 
すか?」
 彼女はそっと立ち上がると、財布だけを持って足早に自動販売機の方に駆けて言った。俺は気持ちが少し落ち着いたところで、セブンスターを取り出した。最後の一本を抜き取って、空になったソフトパックを握りつぶす。ぐしゃりと音を立てて、白くて柔らかい箱は捻れて原型を失った。
 少し離れたところで、彼女が自動販売機の白い光に照らされて、暗いビルの谷間の中で浮き上がって見える。暗い中に浮かび上がる白い姿は、もともとが少し細い彼女を、いっそう細く見せる。ガタン、ガタンと言う音の後に、彼女は屈んだ。
 そこまで見ると、俺は視線を地面に落とし、自分の流した涙と鼻水とヨダレが集まった、黒いシミのよう
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