面接(4)/虹村 凌
 
なかった。
 彼女はハンドバッグの中をごそごそやると、手鏡を取り出し、俺に向けて言った。
「まぶた、すごい事になってますよ」
「あ…」
 何と言うベタな展開だろうか。とは言え、こういう場合は、こういうベタな事の方が、気取っていないし、良いんじゃなかろうか。
 それにしても、酷い顔である。赤く腫れあがったまぶたが目を塞いでいる。正直、少し痛い。冷たいものを目に当てたい気分だ。家の冷凍庫にスプーンを入れて、目を冷やしていた事があったが、今ほどそれが欲しい時は他にない。この痛々しいまぶたをどうにかせねば、電車に乗って帰れない。
「何か、冷たいもの買ってきますね。缶珈琲でいいですか
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