瞳/ふるる
 
中の雨粒のように、幼い子がこぼしたキャンディーのように、散らばってゆきます。それはとてもきれいです。こんなに壊れきった建物の中、割れたガラスの中でも、美しさを放ち。
あの人に、見せてあげたい。

機械であるわたしの寿命は今日のこの時のようです。あの人がガラス越にしてくれたキスを、わたしも返しましょう。ガラスのかけらを、微笑むことができない唇に押し当てて。ジェラルミンの鳥は静かになりました。わたしも瞳を閉じます。皆がため息をつきながら覗き込んだ、深い深い海よりももっと深い青のガラスの瞳を。あの人の姿を記憶したままで。


   グループ"短いおはなし"
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